研究部会報告2014年第2回

東日本研究部会中部日本研究部会西日本研究部会

東日本研究部会

 東日本研究部会では、12 月20 日(土)に研究会の開催を予定しておりましたが、報告申し込みが1 件もなく、理事長ともご相談の上、やむなく休会と致しました。今後の開催と報告申し込みにつきましては、学会ウェブサイトでお知らせするとともに、メール配信の学会ニュースで発信いたします。ふるってご応募いただければ幸いです。
(谷 洋之)

中部日本研究部会

 2014 年12 月13 日(土)14 時~ 17 時半まで、名古屋大学国際開発研究科棟にて、中部日本研究部会を開催した。参加者は7 名と少なかったが、サロン的な雰囲気の中で専門領域にとらわれず自由活発な質疑がなされた。最初の千葉報告は、植民地期初期のメキシコ中央高原における黒曜石の呪医的利用、すなわち宗教的意味合いを伴う医療行為としての黒曜石の利用法について報告したものである。考古学、歴史学、宗教学、医療人類学など様々な分野の研究連携が必要という認識が共有された。つづく河邉報告は、ペルー北部の港町パイタにおける近年の「宗教ツーリズム」の進展に注目したフィールドワーク調査報告である。参加者からはカトリック修道会の歴史動態の整理、行政による巡礼対象をめぐる言説戦略の実態把握、社会経済的視座からの分析の必要性などが指摘された。
 各発表者による要旨は以下の通りである。
(小池康弘)

(1)「黒曜石の呪医的利用―色に象徴化された治癒力―」
千葉裕太(愛知県立大学大学院国際文化研究科博士後期課程)

 黒曜石は病気や怪我など身体の異常を正常に戻すための道具や薬として、あるいは神罰や呪い、危険や災いから身を守るための護符として、外科的・内科的・呪医的に利用されていた。先行研究では病のナチュラリスティクな因果的概念として熱冷二元論が多く取り上げられてきたが、本発表ではパーソナリスティクな病因に焦点を当てた。黒曜石の治癒性は宗教観に基づく色の象徴性が基盤にあったと考えられる。病を与え癒す神であったテスカトリポカや、シペ・トテックの治癒的特性が、各種の石の色に象徴化され、「薬」として呪医的に利用されてきた。中でも黒曜石は、利器の石材という世俗性と、宗教儀礼における舞台装置に利用される神聖性の両性質を併せ持つ物質として特に重要視され、病の予防・治癒効果をもたらす広義の「薬」として利用されていたと結論付けた。

(2)「ペルー北部パイタにおける観光開発と地域社会の対応に関する現状報告―「慈悲の聖母」の祭礼組織と巡礼をめぐって―」
河邉真次(南山大学他非常勤講師)

 ペルー北部の港町パイタには、多くのカトリック巡礼者が訪れる「慈悲の聖母」像が鎮座する。この聖母像への熱狂的な崇敬は、その祝祭が一ヶ月以上に及ぶことからも窺われ、巡礼者をはじめ多くの訪問者を受け入れる信徒団体(Hermandad)ならびに行政当局もその準備に余念がない。パイタは植民地期以来の海上交易の拠点として、また、風光明美な避寒地として多くの観光客を惹きつけるが、2006 年の市観光課設立以降、周辺市町村を巻き込んだ観光開発が加速しており、「慈悲の聖母」の祝祭もまた宗教ツーリズムの目玉として、観光資源の中心に据えられている。本報告では、長期間にわたる「慈悲の聖母」の祝祭において中心的役割を担う信徒団体の歴史と現状を整理するとともに、パイタを訪れる巡礼者の活動、観光開発を推進する市観光課の戦略と活動、および現状の問題点等を提示した。最後に、今後の研究課題として、観光資源としての「慈悲の聖母」の社会的意味の解明、ゲスト(巡礼者や観光客)とホスト社会住民各々の意識調査の必要性等を列挙した。

西日本研究部会

 2014 年12 月20 日( 土)13:30 から18:00 近くまで、:同志社大学烏丸キャンパスにて、西日本部会研究会を開催した。今回の研究会は、同志社大学人文科学研究所研究会「ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究」と合同で、パネル形式にて実施した。参加者は、発表者をふくめ16 名で、予定時間を大幅にこえて、意見交換と研究交流が続いた。最初の浅倉報告は、メキシコ北部モンテレイのメトロポリタン地区で、家事労働市場に参入してきた中米移民女性の事例を紹介し、中米移民家族労働者のおかれた状況や、同邦者や使用人などとの関係について分析した。つづくトレス報告は、ジェンダーをめぐる暴力の問題の複雑性を提示したうえで、しばしば非正規に越境せざるをえない国際労働移民、とくに女性の場合は、そうした暴力の問題が、移民の全過程において顕著に現れるケースであることを示した。最後の松久報告は、現代のニカラグアにおけるフェミニズム運動が、かつてのような一体的な運動主体ではなくなり、国外からの支援をうける多様なNGO となっている現象を紹介し、海外で働くニカラグアの移民女性たちへの支援を主体たる活動とするNGO の例を取りあげた。コメンテーターをつとめた北條ゆかり会員(摂南大学)やフロアーからは、取り上げられた事例のより詳細な位置づけや事例のもつ普遍性の程度、ジェンダーイシューと文化現象との関係などに話題がおよび、活発な議論が展開した。国際労働移動をジェンダーの視点から捉えなおして分析する重要性が確認された。
 以下は各発表者による要旨である。
(村上勇介)

(1)「再生産空間における相互行為のダイナミズム―メキシコ、モンテレイメトロポリタン地区に住む中米出身家事労働者の事例から」
浅倉寛子(メキシコ社会人類学高等学術研究所北東支部)

 本発表では、メキシコ、モンテレイメトロポリタン地区の中米移民の事例をもとに、労働と親密の場が重なり合う家庭という再生産空間における、移住家事労働者と彼女らを取り巻く人々との相互行為と関係性を考察した。

(2) “ Violencia de género y migración:historia interminable”
Marta Torres Falcón(Universidad Autónoma Metropolitana-Unidad Azcapotzalco)

La violencia de género es un fenómenocomplejo que en las últimas décadas ha sido estudiado desde diversas disciplinas,con énfasis en los daños producidos y la protección a las víctimas. Paralelamente,los estudios sobre migración revelan que las mujeres son casi la mitad y que cruzan las fronteras por razones económicas, políticas y, de manera destacada, por la violencia. Es factor de expulsión (sea doméstica, comunitaria o social) está presente a lo largo del trayecto y persiste en el lugar de destino. Una forma extrema de violencia, claramente vinculada con la migración, es la trata de personas.

(3)「ニカラグアのフェミニズム運動と女性労働者への支援活動」
松久玲子(同志社大学)

 2000 年代のニカラグアにおける多様なフェミニズム運動のNGO 化の傾向とその問題点を、NGO 活動の一部である国際分業に組み込まれたコスタリカへの移民女性労働者の支援活動を事例として紹介した。