研究部会報告2016年第1回

東日本研究部会中部日本研究部会西日本研究部会

東日本研究部会

報告申込者がなかったため休会。(谷洋之)

中部日本研究部会

報告申込者がなかったため休会。(小池康宏)

西日本研究部会

2016年4月16日、13:00より京都外国語大学1号館132教室にて、ラテン・アメリカ政経学会関西部会との共催で西日本部会研究会を開催した。個別報告の第一部と最近のトピックに焦点をあわせた第二部の構成で実施し、報告者・討論者をふくむ23名が参加した。結束型と橋渡し型の二つの社会関係資本のタイプからブラジル系ペンテスコ派教会の日本での展開を比較した山田報告では、日本にいるブラジル人の意識や相互連携のあり方、また社会関係資本の機能をめぐる議論が起きた。課題探求的な現地調査に基づいてコスタリカの先住民が持つ慣習法認識に迫ることを目ざした額田報告については、コミュニティ内外の情勢、具体的な訴訟過程の分析などの点で一層の調査研究が課題であることが指摘された。ロードリック・トリレンマを援用しつつ各国の地域統合と国内発展に関する計画を読み解きメルコスルと太平洋同盟のブロック化の可能性を指摘した村上(善)報告をめぐっては、企業戦略に依存するグローバリューチェーンへの参加と国家開発計画との関係性や国内再配分の課題について議論がなされた。ジルマ大統領罷免の動きをめぐる同時進行的な事態についての浜口報告は、弾劾に向けた動きの背後にある複数の政治的な背景を分析し、これを受けた議論では、民主主義的枠組みの強靭性、大衆運動の影響、司法権との関連などが取り上げられた。相変わらずみられる小党分裂化傾向と一般犯罪面での治安や麻薬関連をはじめとする汚職の問題により強い関心を向ける有権者の構図のなかでの選挙過程を分析した村上(勇)報告については、より一般的な社会経済状況の選挙戦への影響や新自由主義路線の今後などについて議論がなされた。(村上勇介)

<第一部>
〇報告1「ブラジル系ペンテコステ派教会の日本における展開」
報告者:山田政信(天理大学)
討論者:伊藤秋仁(京都外国語大学)

在日ブラジル人の宗教は権威に支えらえたカトリック教会よりもデカセギが生んだプロテスタント教会が盛んである。本発表は社会関係資本(結束型と橋渡し型)に着目して、二つの異なる宗教コミュニティを分析・比較した。経済力を背景に展開するユニバーサル教会は教団主導による集権的な信者統制を行うが、信者‐教会という個別的な関係性を構築するため、他の自生的な教会と比較すると社会関係の橋渡しは極めて限定的である。

〇報告2「『慣習法』に向き合う先住民の若手リーダー──コスタリカ、カバグラ先住民慣習法裁判所の事例より──」
報告者: 額田有美(大阪大学大学院博士課程)
討論者: 池田光穂(大阪大学)

昨年2015年の憲法第一条改正により「多民族多文化」の国であることが明記されたコスタリカでは、先住民の慣習法と呼ばれるようなものへの社会の関心が高まりつつある。本発表では、慣習法裁判所という名称の住民組織があるカバグラ先住民居住区の事例より、若手リーダーPがあるときは国家法への対抗イデオロギーとして、またあるときは日常の延長線上の実践として、慣習法を創造しこれを生きている様子を民族誌的記述によって報告した。

〇報告3 “Regional Integration and Development Planning in Latin American and Caribbean Countries”
報告者:村上善道(神戸大学)
討論者:浜口伸明(神戸大学)

現在のラテンアメリカ諸国において、(1)各国の開発計画で想定されている貿易および地域経済統合の役割に関して類似した選好を持つ国々は、そのような利益が期待される地域経済統合の枠組みに実際に参加していること、(2)グローバル経済統合に関わるアジェンダのうち、域外先進国との貿易の推進といった目標が各国の開発計画に取り入れられるかは地域経済統合の枠組みを必要する一方、GVC・RVCへの参入といった目標はそれに関わる地域経済統合の枠組みに参加するかに関係なく広く各国の開発計画に受け入れられていることを明らかにした。

<第二部>動揺する民主主義──ブラジルとペルーの現在──
〇報告1「ブラジルにおける大統領弾劾の動向」
報告者:浜口伸明(神戸大学)
討論者:住田育法(京都外国語大学)

ブラジルでは国会でジルマ大統領の弾劾審査が行われている。その根拠は国会の承認を得ずに政府系金融機関から融資を得て財政支出を増やした、「責任罪」である。しかし、汚職を蔓延させた政治的手腕の欠如、2014年選挙運動で偽りを述べた人格問題、経済政策を失敗した能力不足、政党と地方のポストと予算の配分への不満が、実際の理由である。表面的な公式根拠は脆弱であるにもかかわらず、大衆抗議運動の影響を受けて弾劾への強い勢いが生まれている。

〇報告2「ペルーの2016年大統領・国会議員選挙過程」
報告者:村上勇介(京都大学)
討論者:住田育法(京都外国語大学)

6月に決選投票を迎えるペルーの2016年大統領・国会議員選挙は、(a)有力大統領候補者2名が選挙法違反で失格となる、(b)選挙管理機関の中立性と選挙過程の正当性に疑念が呈される、など異例の展開をみせてきた。本報告では、第一次投票までの過程を中心にこれまでの経緯を振り返り、前回までの選挙過程との相違点、共通点を分析した。