西日本部会研究会開催のご案内

以下の要領で、西日本部会研究会を開催いたします。ラテン・アメリカ政経学会関西部会と合同して実施します。報告者募集時にお知らせした開始時間と開催場所は変更されています(13:30→13:00、京都大学→京都外国語大学)。間違えないようお願い申しあげます。

日時:2016年4月16日(土)13:00~17:20
場所:京都外国語大学1号館132教室
(会場案内 http://www.kufs.ac.jp/campusmap/?id=1st

13:00~15:30 第一部 研究報告
13:00~13:50(13:00~13:25発表 13:25~13:35 コメント 13:35~13:50 討論)
報告1「ブラジル系ペンテコステ派教会の日本における展開」
                        山田政信(天理大学)
要旨:人類学者アルジュン・アパデュライは、移動して脱領土化した人々や集団が創出する空間をディアスポラの公共圏と呼び、それは想像力の作動によって生み出されるという。かつては、日常生活の論理から引き離され特殊な能力を授かったカリスマ的個人が想像力を投射することで、たとえばカーゴカルトや救世主運動といった社会変動が生まれた。しかし、今日的状況においては、ありふれた人々が日常生活の実践の中で想像力を展開し、電子メディアがそれを自由にかつ容易に拡散させることで社会の変動を導いている。在日ブラジル人の宗教生活にも同じことが見て取れる。というのも、それは伝統に支えらえたカトリック教会よりも日常生活者(ありふれた人々)としての彼ら自身が創生するプロテスタント教会の活動が盛んに見えるからである。本発表は、社会関係資本(結束型と橋渡し型)に着目し、デカセギが生んだ宗教コミュニティの二つのタイプを分析・比較する。
 討論者:伊藤秋仁(京都外国語大学)

13:50~14:40(13:50~14:15 発表 14:15~14:25 コメント 14:25~14:40 討論)
報告2 「『慣習法』に向き合う先住民の若手リーダー―コスタリカ、カバグラ先住民慣習法裁判所の事例よりー」
                        額田有美(大阪大学大学院博士課程)
要旨:2014年8月、カバグラ先住民居住区(コスタリカ南部太平洋側)在住の友人の紹介で、発表者はカバグラ慣習法裁判所(TDCC)のコーディネーターを務めるPと初対面した。TDCCは、2000年頃に誕生した住民組織の名称であり、カバグラ先住民居住区内で発生した係争・紛争を先住民ブリブリの慣習法にもとづいて対応する組織として、今日、法律家らの注目を集めている。発表者の関心は、TDCCのあるカバグラ先住民居住区の住民たちが、先住民の慣習法と呼ばれるものをどのように解釈し実践しているのか、ということであった。本発表では、これまでの法人類学研究(特に国家法への対抗イデオロギーとしての先住民の慣習法の議論)を踏まえつつ、2015年に発表者が実施した半年間の現地調査で得たデータをもとに、TDCCコーディネーターであるPがTDCCの拠り所ともなっているブリブリの慣習法にどのように向き合っているのかを明らかにする。
 討論者: 池田光穂(大阪大学)

14:40~15:30(14:40~15:05 発表 15:05~15:15 コメント 15:15~15:30 討論)
報告3 “Regional Integration and Development Planning in Latin American and Caribbean Countries”
     村上善道(神戸大学)
要約:Rodrik (2000)の政治的トリレンマの議論に示されているように、現在のグローバリゼーション下でナショナルアジェンダに基づく大衆政治とグローバル経済への統合を両立させるために地域経済統合は有効な処方箋であると考えられ、そのためには貿易および地域経済統合におけるリージョナルおよびグローバルレベルのアジェンダが各国の開発計画のようなナショナルレベルのアジェンダの中に矛盾なく具体化されている必要があると考えられる。本報告では、ラテンアメリカ各国の開発計画への詳細な分析を行い、現在のラテンアメリカ諸国において1)地域経済統合の枠組みから予測される利益は、そのメンバー国の開発計画において想定されている貿易および経済統合の役割と合致するか(リージョナル-ナショナルアジェンダ間の関係)2)グローバル経済統合のアジェンダの中でどのようなものが各国の開発計画で想定されている貿易および経済統合の役割と合致し、そのために制度上の地域経済統合の枠組みを必要としているか(リージョナル-グローバル-ナショナルアジェンダ間の関係)の2点を明らかにする。
 討論者:浜口伸明(神戸大学)

15:30~15:45 休憩

15:45~17:20 第二部 動揺する民主主義─ブラジルとペルーの現在─
15:45~16:15(15:45~16:10 発表 16:10~16:15 事実関係の質疑)
報告1「ブラジルにおける大統領弾劾の動向」
                          浜口伸明
要旨:ブラジルでは第2期政権を担っているルセフ大統領に対して国会に弾劾請求が提出され、審査が始まっている。ペトロブラス関連汚職事件では、ルーラ元大統領が連邦警察の取り調べを受けた。大統領はルーラ氏を閣僚に迎えて、弾劾が否決されるための国会対策を彼の求心力に頼ろうとしたが、ルーラ氏に警察・検察の捜査の手が及ばないように手を打ったと、さらに批判を受けている。このような中、大衆抗議運動が拡大し、最大の議席数を持つPMDBが連立を離脱するなど、政権維持はますます困難になっている。政治があからさまな権力闘争を繰り広げる一方で、検察官がルーラ氏と大統領の電話を盗聴した音源を勝手に公開するなど追及する側にも権力にも暴走が見られる。PTは「民主的に選ばれた大統領を排除しようとするクーデター」だと批判を強めている。この報告ではこのように混迷が深まるブラジルの政治状況を分析する。

16:15~16:45(16:15~16:40 発表 16:40~16:45 事実関係の質疑)
報告2「ペルーの2016年大統領・国会議員選挙過程」
                          村上勇介(京都大学)
要旨:6月に決選投票を迎えるペルーの2016年大統領・国会議員選挙は、(a)有力大統領候補者2名が選挙法違反で失格となる、(b)選挙管理機関の中立性と選挙過程の正当性に疑念が呈される、など異例の展開となっている。本報告では、第一次投票までの過程を中心にこれまでの経緯を振り返り、前回までの選挙過程との相違点、共通点を分析する。
16:45~17:20 コメント・討論
 討論者:住田育法(京都外国語大学)