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三田千代子編著
『グローバル化の中で生きるとは-日系ブラジル人のトランスナショナルな暮らし』

 上智大学出版(発売ぎょうせい)2011年10月発行、2000円(税込)

本書は、グローバル化の時代に出現したとされる新しい移民の形態であるトランスナショナル・マイグレーションの一事例として在日日系ブラジル人の多様な関係性について研究、考察したものである。ホスト社会、ホームランド、エスニック・コミュニティに社会的に同時に存在するトランスナショナルな日系ブラジル人の生活、世界観を把握するために3年間にわたってブラジルと日本の双方で調査研究した結果をまとめたものである。

調査研究の3年間にリーマンショックと東日本大震災というデカセギの環境に大きな変化をもたらす事件に遭遇し執筆の継続が危ぶまれたが、「デカセギ」現象から4半世紀という時代の一区切りに何とか辿り着くことができた。執筆には、ブラジル研究者、ペルー研究者と並んで、日本で外国人就労者の問題に日々直接対応を迫られている地方自治体の関係者にも協力してもらい、研究者の視点と現場の視点を併存できるようにした。また、ペルーの日系人を取り上げたことにより、それぞれの日本での生活戦略の相違がそれぞれのホームランドでの社会状況の相違の反映であることも示唆されている。

以下の目次から本書の構成と執筆者を参照されたい。

目次

はしがき
【概観】
第1章 ブラジルのディアスポラと日本のブラジル人  三田千代子

【企業と地方自治体】
第2章 日本企業の雇用政策と日系人労働  小池洋一
第3章 地方自治体と日系ブラジル人-関東、東海、関西
[1] 外国人集住率が15%を超える大泉町  加藤博恵
[2] 多文化共生社会に資する地域の取り組み-浜松の事例   堀永乃
[3] 経済危機以降の日系人の就労と生活の変化-滋賀県の場合  高木和彦・松尾隆司

【学校と教会】
第4章 在日ブラジル人の子どもたちの教育とブラジル人学校  拝野寿美子
[コラム] 日系ブラジル人の移動とアイデンティティの形成-学校教育とのかかわりから 山ノ内裕子
第5章 デカセギ・ブラジル人の宗教生活
-エスニック・ネットワークの繋留点としてのブラジル系プロテスタント教会  山田政信
[コラム] 到来したブラジルの宗教   三田千代子

【生活戦略】
第6章 在日ペルー人の生活戦略-在日ブラジル人との比較を通じて  柳田利夫
第7章 在日ブラジル人第二世代のホームランド-自ら選びとる「生きる場所」  拝野寿美子

【概括】
第8章 ホスト社会とホームランドに生きる外国人就労者-アンケート調査を中心に  三田千代子
おわりに